余弦定理の証明:座標と三平方の定理で場合分けなしに導く

数学1A図形と計量(三角比)公式の成立 更新
目次

余弦定理

△ABC\triangle\mathrm{ABC} で、a=BC, b=CA, c=ABa=\mathrm{BC},\ b=\mathrm{CA},\ c=\mathrm{AB} とすると

a2=b2+c2−2bccos⁡Ab2=c2+a2−2cacos⁡Bc2=a2+b2−2abcos⁡C \begin{aligned} a^2&=b^2+c^2-2bc\cos A\\[4pt] b^2&=c^2+a^2-2ca\cos B\\[4pt] c^2&=a^2+b^2-2ab\cos C \end{aligned}

この記事の要点

  • A を原点、B を xx 軸上に置くと、C の座標は (bcos⁡A, bsin⁡A)(b\cos A,\ b\sin A) と書ける
  • BC の長さを2点間の距離で計算すると、そのまま余弦定理になる
  • cos⁡A\cos A が負になるだけなので、A が鈍角でも場合分けはいらない

余弦定理は、2辺とその間の角から残りの辺を求めたり、3辺から角を求めたりするときに使う定理です。垂線を下ろして三平方の定理を使う証明では、A が鋭角か鈍角かで図が変わり、場合分けが必要になります。この記事では、座標を使って1回の計算で証明する方法を紹介します。

余弦定理は何を言っているか

A=90∘A=90^\circ のとき cos⁡A=0\cos A=0 なので、余弦定理は

a2=b2+c2 a^2=b^2+c^2

となり、三平方の定理そのものです。余弦定理は、直角でない三角形にも使えるように、三平方の定理に「補正の項」−2bccos⁡A-2bc\cos A を付けたものだと言えます。

余弦定理の証明:頂点を座標に置く

三角形を座標平面に置きます。

  • A を原点 (0, 0)(0,\ 0) にとる
  • B を xx 軸の正の部分にとる。AB=c\mathrm{AB}=c なので B(c, 0)\mathrm{B}(c,\ 0)
  • C を xx 軸より上にとる。AC=b\mathrm{AC}=b で、AC と xx 軸の正の向きとのなす角が AA なので、三角比の定義から C(bcos⁡A, bsin⁡A)\mathrm{C}(b\cos A,\ b\sin A)
A が鈍角のときは、C の x 座標 b cos A が負になる

このとき、a=BCa=\mathrm{BC} を2点間の距離の公式で計算します。

a2=(bcos⁡A−c)2+(bsin⁡A−0)2=b2cos⁡2A−2bccos⁡A+c2+b2sin⁡2A=b2(sin⁡2A+cos⁡2A)+c2−2bccos⁡A=b2+c2−2bccos⁡A \begin{aligned} a^2&=(b\cos A-c)^2+(b\sin A-0)^2\\[4pt] &=b^2\cos^2A-2bc\cos A+c^2+b^2\sin^2A\\[4pt] &=b^2(\sin^2A+\cos^2A)+c^2-2bc\cos A\\[4pt] &=b^2+c^2-2bc\cos A \end{aligned}

2行目で展開し、3行目で b2b^2 の項をまとめ、4行目で sin⁡2A+cos⁡2A=1\sin^2A+\cos^2A=1 を使いました。

これで a2=b2+c2−2bccos⁡Aa^2=b^2+c^2-2bc\cos A が示せました。残りの2つの式も、どの頂点を原点に置くかを変えれば同じように示せます。

なぜ場合分けがいらないのか

C の座標 (bcos⁡A, bsin⁡A)(b\cos A,\ b\sin A) は、三角比を 0∘<A<180∘0^\circ<A<180^\circ に広げた定義そのものです。A が鈍角のときは cos⁡A<0\cos A<0 となり、C が yy 軸の左側にくることが、座標の符号に自動的に表れます 。図の形を見て式を変える必要がないので、1回の計算で全部の場合をまとめて証明できます。

余弦定理から分かること

角を求める形:余弦定理を cos⁡A\cos A について解くと

cos⁡A=b2+c2−a22bc \cos A=\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}

3辺の長さが分かれば、角の大きさが求められます。

鋭角・直角・鈍角の判定:分母 2bc2bc は正なので、cos⁡A\cos A の符号は分子 b2+c2−a2b^2+c^2-a^2 の符号と同じです。

a2<b2+c2  ⟺  A は鋭角a2=b2+c2  ⟺  A=90∘a2>b2+c2  ⟺  A は鈍角 \begin{aligned} a^2<b^2+c^2&\iff A\text{ は鋭角}\\[4pt] a^2=b^2+c^2&\iff A=90^\circ\\[4pt] a^2>b^2+c^2&\iff A\text{ は鈍角} \end{aligned}

辺の2乗の大小を比べるだけで、角の種類が分かります 。

使い方の例題

例題

△ABC\triangle\mathrm{ABC} で b=3, c=5, A=120∘b=3,\ c=5,\ A=120^\circ のとき、aa を求めよ。

cos⁡120∘=−12\cos 120^\circ=-\dfrac{1}{2} なので、余弦定理より

a2=32+52−2⋅3⋅5⋅(−12)=9+25+15=49 \begin{aligned} a^2&=3^2+5^2-2\cdot 3\cdot 5\cdot\left(-\frac{1}{2}\right)\\[4pt] &=9+25+15\\[4pt] &=49 \end{aligned}

a>0a>0 なので a=7a=7 です。

検算として、3辺 a=7, b=3, c=5a=7,\ b=3,\ c=5 から cos⁡A\cos A を逆に求めると

cos⁡A=32+52−722⋅3⋅5=−1530=−12 \cos A=\frac{3^2+5^2-7^2}{2\cdot 3\cdot 5}=\frac{-15}{30}=-\frac{1}{2}

となり、A=120∘A=120^\circ に戻ることが確かめられます。

注意

AA が鈍角のとき、−2bccos⁡A-2bc\cos A は正になります。「−2bccos⁡A-2bc\cos A だから引き算」と思い込んで a2=34−15a^2=34-15 としてしまうのはよくある間違いです。cos⁡A\cos A の符号ごと代入しましょう。

この記事のまとめ

  • A を原点、B を (c, 0)(c,\ 0)、C を (bcos⁡A, bsin⁡A)(b\cos A,\ b\sin A) に置き、BC の長さを計算すると余弦定理になる。
  • 鈍角でも cos⁡A\cos A が負になるだけなので、場合分けはいらない。
  • cos⁡A=b2+c2−a22bc\cos A=\dfrac{b^2+c^2-a^2}{2bc} の形で角を求め、分子の符号で鋭角・鈍角を判定できる。