lim sinx/x=1 の証明:面積のはさみうちで導く

数学3C極限公式の成立 更新
目次

三角関数の基本的な極限

xx を弧度法(ラジアン)で測るとき、

lim⁡x→0sin⁡xx=1 \lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}=1

この記事の要点

  • 単位円の中で「三角形 < 扇形 < 三角形」と面積を比べると、sin⁡x<x<tan⁡x\sin x<x<\tan x が得られる
  • これを sin⁡x\sin x で割って逆数をとり、はさみうちの原理を使うと極限が 11 になる
  • 扇形の面積 12x\dfrac{1}{2}x を使うので、xx が弧度法でないと成り立たない

数学IIIで三角関数の微分を学ぶとき、最初に必要になるのがこの極限です。(sin⁡x)′=cos⁡x(\sin x)'=\cos x の証明も、この極限を土台にしています。x→0x\to 0 のとき分母も分子も 00 に近づくので、代入では値が決まりません。この記事では、図形の面積を使ってこの極限を証明します。

lim sinx/x=1 は何を言っているか

xx が 00 に近いとき、sin⁡x\sin x と xx がほぼ同じ値になる、という意味です。電卓で確かめると

xxsin⁡x\sin xsin⁡xx\dfrac{\sin x}{x}
0.10.10.0998334⋯0.0998334\cdots0.998334⋯0.998334\cdots
0.010.010.0099998⋯0.0099998\cdots0.999983⋯0.999983\cdots
0.0010.0010.0009999998⋯0.0009999998\cdots0.9999998⋯0.9999998\cdots

となり、比が 11 に近づいていきます。この「近づく」ことを、計算ではなく図形で示すのが次の証明です。

面積のはさみうちによる証明

まず 0<x<π20<x<\dfrac{\pi}{2} の場合を考えます。単位円(半径 11)の上に

A(1, 0),P(cos⁡x, sin⁡x),T(1, tan⁡x) \mathrm{A}(1,\ 0),\qquad \mathrm{P}(\cos x,\ \sin x),\qquad \mathrm{T}(1,\ \tan x)

をとります。T は、A における円の接線と、直線 OP の交点です。

三角形 OAP は扇形に含まれ、扇形は三角形 OAT に含まれる

1. 3つの図形の面積を求める

  • △OAP\triangle\mathrm{OAP}:底辺 OA=1\mathrm{OA}=1、高さ sin⁡x\sin x なので 12sin⁡x\dfrac{1}{2}\sin x
  • 扇形 OAP\mathrm{OAP}:半径 11、中心角 xx なので 12⋅12⋅x=12x\dfrac{1}{2}\cdot 1^2\cdot x=\dfrac{1}{2}x
  • △OAT\triangle\mathrm{OAT}:底辺 OA=1\mathrm{OA}=1、高さ AT=tan⁡x\mathrm{AT}=\tan x なので 12tan⁡x\dfrac{1}{2}\tan x

2. 面積の大小を比べる

図のように、三角形 OAP は扇形に含まれ、扇形は三角形 OAT に含まれます。したがって

12sin⁡x<12x<12tan⁡x \frac{1}{2}\sin x<\frac{1}{2}x<\frac{1}{2}\tan x

全体を 22 倍して

sin⁡x<x<tan⁡x \sin x<x<\tan x

3. sin⁡x\sin x で割る(0<x<π20<x<\dfrac{\pi}{2} では sin⁡x>0\sin x>0 なので、不等号の向きは変わらない)

1<xsin⁡x<1cos⁡x 1<\frac{x}{\sin x}<\frac{1}{\cos x}

右端は tan⁡xsin⁡x=1cos⁡x\dfrac{\tan x}{\sin x}=\dfrac{1}{\cos x} です。

4. 逆数をとる(すべて正なので、逆数をとると不等号の向きが逆になる)

cos⁡x<sin⁡xx<1 \cos x<\frac{\sin x}{x}<1

5. はさみうちの原理を使う

x→+0x\to +0 のとき cos⁡x→1\cos x\to 1 です。sin⁡xx\dfrac{\sin x}{x} は cos⁡x\cos x と 11 にはさまれ、両側がどちらも 11 に近づく ので、

lim⁡x→+0sin⁡xx=1 \lim_{x\to +0}\frac{\sin x}{x}=1

6. x<0x<0 のとき

x=−tx=-t とおくと、x→−0x\to -0 のとき t→+0t\to +0 です。sin⁡(−t)=−sin⁡t\sin(-t)=-\sin t なので

sin⁡xx=sin⁡(−t)−t=−sin⁡t−t=sin⁡tt ⟶ 1 \frac{\sin x}{x}=\frac{\sin(-t)}{-t}=\frac{-\sin t}{-t}=\frac{\sin t}{t}\ \longrightarrow\ 1

右からの極限も左からの極限も 11 なので、lim⁡x→0sin⁡xx=1\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}=1 が示せました。

なぜ弧度法でなければならないのか

証明の中で使った扇形の面積 12r2x\dfrac{1}{2}r^2x は、中心角 xx を弧度法で測ったときの公式 です。角を度数法で測ると、扇形の面積は πr2×x360\pi r^2\times\dfrac{x}{360} になり、同じ証明から出てくる値は

lim⁡x→0sin⁡x∘x=π180 \lim_{x\to 0}\frac{\sin x^\circ}{x}=\frac{\pi}{180}

となって 11 ではありません。数学IIIで角を弧度法で表すのは、このような公式をきれいな形にするためでもあります。

なお、この証明は「扇形の面積は 12r2x\dfrac{1}{2}r^2x」という事実を認めて使っています。

使い方の例題

例題

次の極限を求めよ。

(1) lim⁡x→0sin⁡3xx\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{\sin 3x}{x} (2) lim⁡x→01−cos⁡xx2\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{1-\cos x}{x^2}

(1) 分母を 3x3x にそろえるために、33 を掛けて 33 で割ります。

sin⁡3xx=3⋅sin⁡3x3x \frac{\sin 3x}{x}=3\cdot\frac{\sin 3x}{3x}

x→0x\to 0 のとき 3x→03x\to 0 なので sin⁡3x3x→1\dfrac{\sin 3x}{3x}\to 1。答えは 33 です。

(2) sin⁡x\sin x を作るために、分母と分子に 1+cos⁡x1+\cos x を掛けます。

1−cos⁡xx2=(1−cos⁡x)(1+cos⁡x)x2(1+cos⁡x)=1−cos⁡2xx2(1+cos⁡x)=sin⁡2xx2⋅11+cos⁡x \begin{aligned} \frac{1-\cos x}{x^2}&=\frac{(1-\cos x)(1+\cos x)}{x^2(1+\cos x)}\\[4pt] &=\frac{1-\cos^2 x}{x^2(1+\cos x)}\\[4pt] &=\frac{\sin^2 x}{x^2}\cdot\frac{1}{1+\cos x} \end{aligned}

3行目は 1−cos⁡2x=sin⁡2x1-\cos^2x=\sin^2x を使いました。x→0x\to 0 のとき sin⁡2xx2=(sin⁡xx)2→1\dfrac{\sin^2 x}{x^2}=\left(\dfrac{\sin x}{x}\right)^2\to 1、11+cos⁡x→12\dfrac{1}{1+\cos x}\to\dfrac{1}{2} なので、答えは 12\dfrac{1}{2} です。

注意

sin⁡3xx\dfrac{\sin 3x}{x} を「sin⁡xx\dfrac{\sin x}{x} が 11 だから答えは 11」としてしまうのはよくある間違いです。公式が使えるのは、sin⁡\sin の中身と分母が同じ式のときだけです。

この記事のまとめ

  • 単位円で面積を比べると sin⁡x<x<tan⁡x\sin x<x<\tan x(0<x<π20<x<\dfrac{\pi}{2})。
  • 変形すると cos⁡x<sin⁡xx<1\cos x<\dfrac{\sin x}{x}<1 となり、はさみうちの原理で極限は 11。
  • 扇形の面積を使うので、xx は弧度法で測る必要がある。
  • 使うときは、sin⁡\sin の中身と分母をそろえる。