三角関数の導関数
x を弧度法(ラジアン)で測るとき
(sinx)′=cosx,(cosx)′=−sinxこの記事の要点
- 導関数の定義に sin(x+h) を入れ、加法定理で sinx と cosx の項に分ける
- 使う極限は h→0limhsinh=1 と h→0limhcosh−1=0 の2つ
- cosx=sin(x+2π) を使うと、(cosx)′=−sinx もすぐに導ける
三角関数の微分は、数学IIIの微分法で最初に出会う「多項式ではない関数」の微分です。公式は短いですが、導くには加法定理と極限 xsinx→1 の2つを組み合わせる必要があります。この記事では、その組み合わせ方を一行ずつたどります。
(sin x)’=cos x は何を言っているか
導関数 (sinx)′ は、y=sinx のグラフの各点での接線の傾きを表す関数です。公式は、その傾きが cosx の値に等しいと言っています。
y = sin x の接線の傾き(上)は、y = cos x の値(下)に等しいたとえば x=0 では sinx のグラフは傾き 1 で上り、cos0=1 です。山の頂上 x=2π では傾きが 0 になり、cos2π=0 です。図で見ても、傾きと cosx の値がそろっています。
(sin x)’=cos x の証明
1. 導関数の定義に入れる
(sinx)′=h→0limhsin(x+h)−sinx2. 加法定理で sin(x+h) を展開する
sin(x+h)=sinxcosh+cosxsinh なので、分子は
sin(x+h)−sinx=sinxcosh+cosxsinh−sinx=sinx(cosh−1)+cosxsinh2行目は sinx を含む2つの項をまとめました。
3. h で割って2つの極限に分ける
hsin(x+h)−sinx=sinx⋅hcosh−1+cosx⋅hsinhsinx と cosx は h を含まないので、h→0 の極限では定数として扱えます。あとは hcosh−1 と hsinh の極限が分かれば終わりです。
4. h→0limhsinh=1
これは単位円の面積を比べる「はさみうちの原理」で示される、三角関数の基本的な極限です。
5. h→0limhcosh−1=0 を示す
分母と分子に cosh+1 を掛けて、sinh を作ります。
hcosh−1=h(cosh+1)(cosh−1)(cosh+1)=h(cosh+1)cos2h−1=−hsinh⋅cosh+1sinh3行目は cos2h−1=−sin2h を使いました。h→0 のとき hsinh→1、cosh+1sinh→20=0 なので、全体は −1⋅0=0 に近づきます。
6. まとめる
手順3の式に、手順4・5の結果を入れると
(sinx)′=sinx⋅0+cosx⋅1=cosxとなり、(sinx)′=cosx が証明できました
。
(cos x)’=−sin x を導く
cosx=sin(x+2π) を使います。手順1〜6の計算は x がどんな値でも成り立つので、x を x+2π に置きかえても同じように計算でき、sin(x+2π) の導関数は cos(x+2π) になります。したがって
(cosx)′=cos(x+2π)=−sinx2行目は cos(x+2π)=−sinx を使いました。手順1〜6と同じく、加法定理で直接計算しても同じ結果になります。
例題
曲線 y=sinx 上の点 (3π, 23) における接線の方程式を求めよ。
y′=cosx なので、接線の傾きは cos3π=21 です。
y−23y=21(x−3π)=21x−6π+23検算として x=3π を代入すると、6π−6π+23=23 となり、接点を通っています。
注意
この公式は、x を弧度法で測ったときだけ成り立ちます。証明の手順4で使った hsinh→1 が、弧度法でなければ成り立たないからです。角を度で測ると、余分な係数 180π が付きます。
この記事のまとめ
- 導関数の定義に加法定理を使い、sinx⋅hcosh−1+cosx⋅hsinh の形にする。
- hsinh→1、hcosh−1→0 から (sinx)′=cosx。
- cosx=sin(x+2π) から (cosx)′=−sinx。公式は弧度法でのみ成り立つ。