積分は仕事と面積:力と移動距離のグラフの面積が仕事になる理由

目次

位置で変わる力のする仕事

物体が xx 軸上を x1x_1 から x2x_2 まで動く間に、xx 軸方向の力 F(x)F(x) がする仕事は

W=∫x1x2F(x) dx W=\int_{x_1}^{x_2}F(x)\,dx

この記事の要点

  • 力が一定なら仕事は W=FxW=Fx で、F-x グラフの長方形の面積になる
  • 力が変わるときは、短い区間に分けて「ほぼ一定」とみなし、足し合わせる。これが定積分
  • ばねの力 F=kxF=kx を積分すると、弾性エネルギー 12kx2\dfrac{1}{2}kx^2 が出てくる

物理基礎で学ぶ仕事は W=FxW=Fx(力×移動距離)です。でも、ばねの力のように、動くにつれて力が変わるときはどう計算すればよいでしょうか。このコラムでは、数学IIの定積分がその答えになることを紹介します。微分と速度の関係は微分は速度、2回微分は加速度で紹介しました。今回はその逆向き、積分の話です。

一定の力の仕事は長方形の面積

一定の力 FF で、力の向きに距離 xx だけ動かしたときの仕事は W=FxW=Fx です。横軸に位置、縦軸に力をとった F-x グラフでは、高さ FF、幅 xx の長方形の面積がちょうど FxFx になります。

つまり、仕事は F-x グラフの面積で表せる と言いかえられます。この見方が、力が変わる場合にそのまま広がります。

力が変わるときは細かく分けて足す

力 F(x)F(x) が位置によって変わるとき、区間 x1≦x≦x2x_1\le x\le x_2 を幅 Δx\Delta x の細い区間に分けます。1つの区間の中では、力はほとんど変わらないので、その区間での仕事はおよそ F(x) ΔxF(x)\,\Delta x です。

細い長方形の面積 F(x)Δx を足すと、仕事の近似になる

全体の仕事は、これらの和です。

W≒∑F(x) Δx W\fallingdotseq\sum F(x)\,\Delta x

Δx\Delta x を限りなく小さくすると、長方形の和はグラフの下の面積に近づきます。数学ではこの極限を定積分と呼び、∫x1x2F(x) dx\displaystyle\int_{x_1}^{x_2}F(x)\,dx と書きます(数学IIIでは「区分求積法」として学びます)。記号 ∫\int は、ライプニッツが1675年に、ラテン語で「和」を意味する summa の頭文字 S を縦に伸ばして作ったものです。

ばねの弾性エネルギーを導く

自然の長さから xx だけ伸びたばねは、F=kxF=kx の力で元に戻ろうとします(kk はばね定数)。ばねをゆっくり引いて、伸びを 00 から xx にするのに必要な仕事は

W=∫0xks ds=[12ks2]0x=12kx2 \begin{aligned} W&=\int_0^{x}ks\,ds\\[4pt] &=\left[\frac{1}{2}ks^2\right]_0^{x}=\frac{1}{2}kx^2 \end{aligned}

(積分の文字を ss にしたのは、上端の xx と区別するためです。)これが弾性エネルギー 12kx2\dfrac{1}{2}kx^2 の正体です。F-x グラフでは、底辺 xx、高さ kxkx の三角形の面積 12⋅x⋅kx\dfrac{1}{2}\cdot x\cdot kx と一致します。ばねの運動は三角関数と単振動でも紹介しています。

例題

ばね定数 20 N/m20\,\mathrm{N/m} のばねを、自然の長さから 0.10 m0.10\,\mathrm{m} 伸ばすのに必要な仕事と、さらに 0.10 m0.10\,\mathrm{m} 伸ばして 0.20 m0.20\,\mathrm{m} にするのに必要な仕事を求めよ。

W1=∫00.1020s ds=12×20×0.102=0.10 JW2=∫0.100.2020s ds=12×20×(0.202−0.102)=0.30 J \begin{aligned} W_1&=\int_0^{0.10}20s\,ds=\frac{1}{2}\times 20\times 0.10^2=0.10\ \mathrm{J}\\[4pt] W_2&=\int_{0.10}^{0.20}20s\,ds=\frac{1}{2}\times 20\times(0.20^2-0.10^2)=0.30\ \mathrm{J} \end{aligned}
同じ 0.10 m でも、伸びが大きいところほど仕事が大きい

同じ 0.10 m0.10\,\mathrm{m} 伸ばすのでも、2回目は3倍の仕事が必要です。力が伸びに比例して大きくなるので、グラフの面積も後ろほど大きくなる からです。台形の面積 (2.0+4.0)×0.102=0.30 J\dfrac{(2.0+4.0)\times 0.10}{2}=0.30\,\mathrm{J} でも確かめられます。

その先:万有引力の位置エネルギー

物理(物理基礎の次の科目)では、地球のまわりの物体の運動を、万有引力 F=GMmr2F=\dfrac{GMm}{r^2} で考えます(GG は万有引力定数、MM は地球の質量、rr は地球の中心からの距離)。この力は距離によって変わるので、仕事は積分で求めます。物体を地球の中心から r1r_1 の位置から r2r_2 の位置まで(r1<r2r_1<r_2)引き離すのに必要な仕事は

W=∫r1r2GMmr2 dr=[−GMmr]r1r2=GMm(1r1−1r2) \begin{aligned} W&=\int_{r_1}^{r_2}\frac{GMm}{r^2}\,dr\\[4pt] &=\left[-\frac{GMm}{r}\right]_{r_1}^{r_2}=GMm\left(\frac{1}{r_1}-\frac{1}{r_2}\right) \end{aligned}

ここから、万有引力の位置エネルギー −GMmr-\dfrac{GMm}{r} という式が出てきます。地表近くで使う mghmgh は、この式を rr の変化が小さい範囲で近似したものです。

注意

W=∫F dxW=\int F\,dx の FF は、動く向き(xx 軸方向)の力の成分です。動く向きと垂直な力(垂直抗力など)は仕事をしません。また、力の向きと動く向きが反対なら、仕事は負になります。

この記事のまとめ

  • 仕事は F-x グラフの面積。一定の力なら長方形、変わる力なら定積分 ∫x1x2F(x) dx\displaystyle\int_{x_1}^{x_2}F(x)\,dx。
  • 細い長方形 F(x)ΔxF(x)\Delta x を足して極限をとる考え方が、積分の意味そのもの。
  • ばねの力を積分すると弾性エネルギー 12kx2\dfrac{1}{2}kx^2、万有引力を積分すると −GMmr-\dfrac{GMm}{r} の位置エネルギーが出てくる。