3次方程式の解の公式と虚数:解の公式の先にある大学数学
目次
高校の問題
3次方程式 を解け。
この記事の要点
- 高校では因数定理で解ける。答えはすべて実数()
- ところが「3次方程式の解の公式」で解くと、途中で が現れ、虚数を通らないと実数の答えにたどり着けない
- さらに5次以上の方程式には、一般の解の公式が存在しない。これを説明するのが大学で学ぶガロア理論
まずは高校の方法で解く
を代入すると なので、因数定理より を因数にもちます。割り算をすると
となり、 を解の公式で解いて、答えは です。3つとも実数です。
この方法は「 に気づけば」使えます。では、気づけないときでも使える3次方程式の解の公式はあるのでしょうか。
3次方程式の解の公式(カルダノの公式)
の形の3次方程式を考えます。 とおくと
なので、、 となる を見つければ解けます。 と は和が 、積が なので、数学IIの解と係数の関係から、次の2次方程式の2つの解です。
これを解の公式で解き、3乗根をとって足したものが、3次方程式の解の公式です。この方法は、1545年にイタリアのカルダノが著書『アルス・マグナ』で発表しました。
実数の答えのために虚数が必要になる
冒頭の方程式は なので、 です。2次方程式は
で、判別式は です。解は
となり、虚数が出てきてしまいます。答えはすべて実数のはずなのに、です。
ここで、 を計算してみます。
つまり 、 とすれば 、、 を満たし、
と、虚数部分が打ち消し合って実数の答え が出てきます。実数の答えを公式で求めるのに、虚数を通る必要がある のです。残りの2つの解 も、 の3乗根 を使って などとすると得られます。
カルダノ自身もこの不思議な計算に気づいていましたが、意味を十分には説明できませんでした。この場合を詳しく研究したのが、1572年の著書『代数学』を書いたボンベリです。2次方程式では「判別式が負なら実数解なし」で済みましたが、3次方程式では虚数を数として扱わないと先に進めない——これが、複素数が数学に受け入れられていくきっかけの1つになりました。
5次方程式には解の公式がない
『アルス・マグナ』には4次方程式の解き方も載っています。では5次はどうでしょうか。
多くの数学者が挑戦しましたが、1824年にノルウェーのアーベルが、一般の5次方程式は、四則演算と累乗根だけでは解けない ことを証明しました。その後、フランスのガロアは、どんな方程式なら累乗根で解けるのかを判定する方法を考え、そのために群という考え方を使いました。
この「ガロア理論」は、大学の数学科では代数学の講義で、群・環・体という考え方とともに学びます。高校の解の公式は、その入り口にあたります。
この記事のまとめ
- 3次方程式 は、 とおいて2次方程式に帰着させると解ける(カルダノの公式)
- では、答えが実数でも途中で が現れ、虚数を通らないと答えに届かない
- 5次以上には一般の解の公式がない。その理由を説明するのが大学で学ぶガロア理論
参考にした資料
- J. J. O’Connor, E. F. Robertson「Quadratic, cubic and quartic equations」MacTutor History of Mathematics(セント・アンドルーズ大学)
- 同「Girolamo Cardano」「Rafael Bombelli」「Niels Henrik Abel」「Évariste Galois」MacTutor History of Mathematics
- 「Cubic equation」「Abel–Ruffini theorem」Wikipedia(英語版)
