3次方程式の解の公式と虚数:解の公式の先にある大学数学

目次

高校の問題

3次方程式 x3−15x−4=0x^3-15x-4=0 を解け。

この記事の要点

  • 高校では因数定理で解ける。答えはすべて実数(4, −2±34,\ -2\pm\sqrt{3})
  • ところが「3次方程式の解の公式」で解くと、途中で −121\sqrt{-121} が現れ、虚数を通らないと実数の答えにたどり着けない
  • さらに5次以上の方程式には、一般の解の公式が存在しない。これを説明するのが大学で学ぶガロア理論

まずは高校の方法で解く

x=4x=4 を代入すると 64−60−4=064-60-4=0 なので、因数定理より x−4x-4 を因数にもちます。割り算をすると

x3−15x−4=(x−4)(x2+4x+1) x^3-15x-4=(x-4)(x^2+4x+1)

となり、x2+4x+1=0x^2+4x+1=0 を解の公式で解いて、答えは x=4, −2±3x=4,\ -2\pm\sqrt{3} です。3つとも実数です。

この方法は「x=4x=4 に気づけば」使えます。では、気づけないときでも使える3次方程式の解の公式はあるのでしょうか。

3次方程式の解の公式(カルダノの公式)

x3=px+qx^3=px+q の形の3次方程式を考えます。x=u+vx=u+v とおくと

x3=(u+v)3=(u3+v3)+3uv (u+v) x^3=(u+v)^3=(u^3+v^3)+3uv\,(u+v)

なので、3uv=p3uv=p、u3+v3=qu^3+v^3=q となる u, vu,\ v を見つければ解けます。u3u^3 と v3v^3 は和が qq、積が (p3)3\left(\dfrac{p}{3}\right)^3 なので、数学IIの解と係数の関係から、次の2次方程式の2つの解です。

t2−qt+(p3)3=0 t^2-qt+\left(\frac{p}{3}\right)^3=0

これを解の公式で解き、3乗根をとって足したものが、3次方程式の解の公式です。この方法は、1545年にイタリアのカルダノが著書『アルス・マグナ』で発表しました。

実数の答えのために虚数が必要になる

冒頭の方程式は x3=15x+4x^3=15x+4 なので、p=15, q=4p=15,\ q=4 です。2次方程式は

t2−4t+125=0 t^2-4t+125=0

で、判別式は 42−4⋅125<04^2-4\cdot 125<0 です。解は

t=2±−121=2±11i t=2\pm\sqrt{-121}=2\pm 11i

となり、虚数が出てきてしまいます。答えはすべて実数のはずなのに、です。

ここで、(2+i)3(2+i)^3 を計算してみます。

(2+i)3=(3+4i)(2+i)=6+3i+8i+4i2=2+11i \begin{aligned} (2+i)^3&=(3+4i)(2+i)\\[4pt] &=6+3i+8i+4i^2=2+11i \end{aligned}

つまり u=2+iu=2+i、v=2−iv=2-i とすれば u3=2+11iu^3=2+11i、v3=2−11iv^3=2-11i、uv=5=p3uv=5=\dfrac{p}{3} を満たし、

x=u+v=(2+i)+(2−i)=4 x=u+v=(2+i)+(2-i)=4

と、虚数部分が打ち消し合って実数の答え 44 が出てきます。実数の答えを公式で求めるのに、虚数を通る必要がある のです。残りの2つの解 −2±3-2\pm\sqrt{3} も、11 の3乗根 ω=−1+3 i2\omega=\dfrac{-1+\sqrt{3}\,i}{2} を使って uω+vω2u\omega+v\omega^2 などとすると得られます。

カルダノ自身もこの不思議な計算に気づいていましたが、意味を十分には説明できませんでした。この場合を詳しく研究したのが、1572年の著書『代数学』を書いたボンベリです。2次方程式では「判別式が負なら実数解なし」で済みましたが、3次方程式では虚数を数として扱わないと先に進めない——これが、複素数が数学に受け入れられていくきっかけの1つになりました。

5次方程式には解の公式がない

『アルス・マグナ』には4次方程式の解き方も載っています。では5次はどうでしょうか。

四則演算と累乗根で解を表す公式は、4次まで

多くの数学者が挑戦しましたが、1824年にノルウェーのアーベルが、一般の5次方程式は、四則演算と累乗根だけでは解けない ことを証明しました。その後、フランスのガロアは、どんな方程式なら累乗根で解けるのかを判定する方法を考え、そのために群という考え方を使いました。

この「ガロア理論」は、大学の数学科では代数学の講義で、群・環・体という考え方とともに学びます。高校の解の公式は、その入り口にあたります。

この記事のまとめ

  • 3次方程式 x3=px+qx^3=px+q は、x=u+vx=u+v とおいて2次方程式に帰着させると解ける(カルダノの公式)
  • x3=15x+4x^3=15x+4 では、答えが実数でも途中で 2±11i2\pm 11i が現れ、虚数を通らないと答えに届かない
  • 5次以上には一般の解の公式がない。その理由を説明するのが大学で学ぶガロア理論

参考にした資料