内積の公式の導出:余弦定理から成分表示 a₁b₁+a₂b₂ へ

数学3Cベクトル公式の成立 更新
目次

内積の定義と成分表示

0⃗\vec{0} でない2つのベクトル a⃗, b⃗\vec{a},\ \vec{b} のなす角を θ (0∘≦θ≦180∘)\theta\ (0^\circ\le\theta\le 180^\circ) とするとき、内積は

a⃗⋅b⃗=∣a⃗∣ ∣b⃗∣cos⁡θ \vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}|\,|\vec{b}|\cos\theta

と定義される。a⃗=(a1, a2), b⃗=(b1, b2)\vec{a}=(a_1,\ a_2),\ \vec{b}=(b_1,\ b_2) のとき

a⃗⋅b⃗=a1b1+a2b2 \vec{a}\cdot\vec{b}=a_1b_1+a_2b_2

この記事の要点

  • 内積の定義には cos⁡θ\cos\theta が入っているので、三角形の余弦定理と結びつく
  • 三角形 OAB の辺 AB を、余弦定理と成分の2通りで計算すると、成分表示 a1b1+a2b2a_1b_1+a_2b_2 が出てくる
  • 成分表示を使うと、なす角や垂直条件を座標だけで計算できる

内積は「∣a⃗∣∣b⃗∣cos⁡θ|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta」と定義されるのに、成分で計算すると「a1b1+a2b2a_1b_1+a_2b_2」という、角度がどこにも出てこない式になります。なぜこの2つが同じ値になるのでしょうか。この記事では、余弦定理を使ってその理由を確かめます。

内積の公式は何を言っているか

定義 ∣a⃗∣∣b⃗∣cos⁡θ|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta は、長さと角度という図形の量で書かれています。一方、成分表示 a1b1+a2b2a_1b_1+a_2b_2 は、座標のかけ算と足し算だけで計算できます。

公式は、角度を測らなくても、成分から内積が計算できる ことを言っています。これがあるので、成分で与えられたベクトルのなす角も、内積を通して求められます。

内積の公式の導出:余弦定理を使う

a⃗=OA→, b⃗=OB→\vec{a}=\overrightarrow{\mathrm{OA}},\ \vec{b}=\overrightarrow{\mathrm{OB}} とし、O、A、B が一直線上にない場合(0∘<θ<180∘0^\circ<\theta<180^\circ)を考えます。このとき三角形 OAB ができ、辺 AB は b⃗−a⃗\vec{b}-\vec{a} の大きさです。

三角形 OAB の辺 AB の長さを、2通りの方法で計算する

1. 余弦定理で AB2\mathrm{AB}^2 を表す

三角形 OAB で、角 O は θ\theta、OA=∣a⃗∣\mathrm{OA}=|\vec{a}|、OB=∣b⃗∣\mathrm{OB}=|\vec{b}| なので

AB2=∣a⃗∣2+∣b⃗∣2−2∣a⃗∣ ∣b⃗∣cos⁡θ \mathrm{AB}^2=|\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2-2|\vec{a}|\,|\vec{b}|\cos\theta

2. 成分で AB2\mathrm{AB}^2 を表す

b⃗−a⃗=(b1−a1, b2−a2)\vec{b}-\vec{a}=(b_1-a_1,\ b_2-a_2) なので

AB2=(b1−a1)2+(b2−a2)2=(a12+a22)+(b12+b22)−2(a1b1+a2b2)=∣a⃗∣2+∣b⃗∣2−2(a1b1+a2b2) \begin{aligned} \mathrm{AB}^2&=(b_1-a_1)^2+(b_2-a_2)^2\\[4pt] &=(a_1^2+a_2^2)+(b_1^2+b_2^2)-2(a_1b_1+a_2b_2)\\[4pt] &=|\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2-2(a_1b_1+a_2b_2) \end{aligned}

2行目は展開して並べかえ、3行目は ∣a⃗∣2=a12+a22|\vec{a}|^2=a_1^2+a_2^2、∣b⃗∣2=b12+b22|\vec{b}|^2=b_1^2+b_2^2 を使いました。

3. 2つを比べる

同じ AB2\mathrm{AB}^2 なので、∣a⃗∣2+∣b⃗∣2|\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2 を両辺から消して −2-2 で割ると

∣a⃗∣ ∣b⃗∣cos⁡θ=a1b1+a2b2 |\vec{a}|\,|\vec{b}|\cos\theta=a_1b_1+a_2b_2

左辺は内積の定義そのものなので、a⃗⋅b⃗=a1b1+a2b2\vec{a}\cdot\vec{b}=a_1b_1+a_2b_2 が示せました。

一直線上にある場合:θ=0∘\theta=0^\circ または 180∘180^\circ のときは三角形ができませんが、b⃗=ka⃗\vec{b}=k\vec{a}(kk は 00 でない実数)と書けます。θ=0∘\theta=0^\circ(k>0k>0)なら cos⁡θ=1\cos\theta=1、θ=180∘\theta=180^\circ(k<0k<0)なら cos⁡θ=−1\cos\theta=-1 で、どちらの場合も左辺 ∣a⃗∣∣b⃗∣cos⁡θ|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta と右辺 a1b1+a2b2a_1b_1+a_2b_2 はともに k(a12+a22)k(a_1^2+a_2^2) になります。したがって、公式はすべての場合に成り立ちます。

使い方の例題

例題

a⃗=(2, 1), b⃗=(1, 3)\vec{a}=(2,\ 1),\ \vec{b}=(1,\ 3) のなす角 θ\theta を求めよ。

成分表示で内積を計算し、定義の式から cos⁡θ\cos\theta を求めます。

a⃗⋅b⃗=2⋅1+1⋅3=5∣a⃗∣=22+12=5,∣b⃗∣=12+32=10 \begin{aligned} \vec{a}\cdot\vec{b}&=2\cdot 1+1\cdot 3=5\\[4pt] |\vec{a}|&=\sqrt{2^2+1^2}=\sqrt{5},\qquad |\vec{b}|=\sqrt{1^2+3^2}=\sqrt{10} \end{aligned}

よって

cos⁡θ=a⃗⋅b⃗∣a⃗∣ ∣b⃗∣=55⋅10=552=12 \cos\theta=\frac{\vec{a}\cdot\vec{b}}{|\vec{a}|\,|\vec{b}|}=\frac{5}{\sqrt{5}\cdot\sqrt{10}}=\frac{5}{5\sqrt{2}}=\frac{1}{\sqrt{2}}

0∘≦θ≦180∘0^\circ\le\theta\le 180^\circ なので θ=45∘\theta=45^\circ です。

検算として、b⃗−a⃗=(−1, 2)\vec{b}-\vec{a}=(-1,\ 2) の大きさの2乗 1+4=51+4=5 と、余弦定理の右辺 5+10−2510cos⁡45∘=15−2⋅52⋅12=55+10-2\sqrt{5}\sqrt{10}\cos 45^\circ=15-2\cdot 5\sqrt{2}\cdot\dfrac{1}{\sqrt{2}}=5 が一致します。

垂直条件と空間ベクトル

θ=90∘\theta=90^\circ のとき cos⁡θ=0\cos\theta=0 なので、0⃗\vec{0} でない2つのベクトルについて

a⃗⊥b⃗  ⟺  a1b1+a2b2=0 \vec{a}\perp\vec{b}\iff a_1b_1+a_2b_2=0

が成り立ちます。また、空間ベクトル a⃗=(a1, a2, a3)\vec{a}=(a_1,\ a_2,\ a_3)、b⃗=(b1, b2, b3)\vec{b}=(b_1,\ b_2,\ b_3) でも、同じ導出で

a⃗⋅b⃗=a1b1+a2b2+a3b3 \vec{a}\cdot\vec{b}=a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3

となります。余弦定理は平面上の三角形の定理ですが、空間の3点 O、A、B も1つの平面上にあるので、そのまま使えるからです。

注意

なす角 θ\theta は、2つのベクトルの始点をそろえたときの角です。三角形の辺のベクトル(たとえば AB→\overrightarrow{\mathrm{AB}} と BC→\overrightarrow{\mathrm{BC}})で内積を考えるときは、始点がそろっていないので、なす角は三角形の内角ではなく 180∘180^\circ からその角を引いた大きさになります。

この記事のまとめ

  • 三角形 OAB の AB2\mathrm{AB}^2 を、余弦定理と成分の2通りで計算すると、∣a⃗∣∣b⃗∣cos⁡θ=a1b1+a2b2|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta=a_1b_1+a_2b_2 が出る。
  • 一直線上にある場合も b⃗=ka⃗\vec{b}=k\vec{a} として確かめられる。
  • 成分表示から、なす角・垂直条件が計算でき、空間ベクトルでも同じ形になる。