確率漸化式の京大2025年:硬貨と符号の期待値で偶奇を解く

数学1A場合の数と確率入試の背景 更新
目次

入試問題

京都大学 2025年度 理系 第6問(問題文は要約)

nn を 22 以上の整数とし、硬貨を続けて nn 回投げる。kk 回目に表が出れば Xk=1X_k=1、裏が出れば Xk=0X_k=0 とおき、Yn=∑k=2nXk−1XkY_n=\displaystyle\sum_{k=2}^{n}X_{k-1}X_k とする。YnY_n が奇数である確率 pnp_n を求めよ。

この記事の要点

  • YnY_n は「表が2回続けて出た箇所の数」。偶奇の確率は、(−1)Yn(-1)^{Y_n} という符号の平均にかえると漸化式が単純になる
  • P(偶数)=1−P(奇数)P(\text{偶数})=1-P(\text{奇数}) という余事象の関係から、符号の平均 qnq_n は qn=1−2pnq_n=1-2p_n と表せる
  • 隣の項ではなく2つ先の項とつなぐと qn+2=12qnq_{n+2}=\dfrac{1}{2}q_n になり、答えは pn=12−12⌊n/2⌋+1p_n=\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{2^{\lfloor n/2\rfloor+1}}

さいころや硬貨を使った確率の問題では、「余事象を考える」「nn 回目と n+1n+1 回目の関係を漸化式にする」の2つが定番の道具です(場合の数の数え方も参考になります)。この記事では、2025年の京大の問題でこの2つがどう組み合わさるのかを、自作の解答で見ていきます。出題の年度・問題番号・答えは、複数の解説サイトの記述で確認しています。

この問題の何が面白いか

YnY_n は、Xk−1Xk=1X_{k-1}X_k=1 となる kk、つまり表が連続した箇所の数です。たとえば n=5n=5 で「表表裏表表」なら Y5=2Y_5=2(偶数)です。

素朴に「表が連続する回数がちょうど jj 回の確率」を jj ごとに求めて足し上げると、場合の数が複雑になり、計算が大変です。ところが偶奇だけを知りたいときは、もっと軽い道があります。偶奇を、符号 +1+1、−1-1 の平均にかえる ことです。ここがこの問題の見どころです。

確率漸化式の解き方:偶奇を符号にかえる

方針:直前の目が表か裏かで、次に YY が増えるかどうかが決まります。そこで「直前の目」と「YY の偶奇」を同時に追いかける漸化式を立てます。

手順1:符号の平均を定義する

YnY_n が偶数なら (−1)Yn=1(-1)^{Y_n}=1、奇数なら −1-1 です。P(Ynが偶数)=1−pnP(Y_n\text{が偶数})=1-p_n(余事象)なので、

qn=P(Ynが偶数)−P(Ynが奇数)=(1−pn)−pn=1−2pn q_n=P(Y_n\text{が偶数})-P(Y_n\text{が奇数})=(1-p_n)-p_n=1-2p_n

qnq_n がわかれば、pn=1−qn2p_n=\dfrac{1-q_n}{2} で pnp_n が出ます。

手順2:直前の目で分ける

ana_n、bnb_n を次のように定めます。

an=(Xn=0 かつ Yn 偶数の確率)−(Xn=0 かつ Yn 奇数の確率) a_n=(\text{$X_n=0$ かつ $Y_n$ 偶数の確率})-(\text{$X_n=0$ かつ $Y_n$ 奇数の確率}) bn=(Xn=1 かつ Yn 偶数の確率)−(Xn=1 かつ Yn 奇数の確率) b_n=(\text{$X_n=1$ かつ $Y_n$ 偶数の確率})-(\text{$X_n=1$ かつ $Y_n$ 奇数の確率})

qn=an+bnq_n=a_n+b_n です。また n=1n=1 では Y1=0Y_1=0(偶数)なので a1=b1=12a_1=b_1=\dfrac{1}{2} です。

手順3:nn 回目から n+1n+1 回目への関係

Yn+1=Yn+XnXn+1Y_{n+1}=Y_n+X_nX_{n+1} なので、次のようになります。

  • Xn+1=0X_{n+1}=0(確率 12\dfrac{1}{2}):YY は変わらない。直前が表でも裏でも符号はそのまま
  • Xn+1=1X_{n+1}=1(確率 12\dfrac{1}{2}):直前が裏なら YY は変わらず、直前が表なら YY が 11 増えて符号が反転する

したがって

an+1=12 (an+bn)bn+1=12 (an−bn) \begin{aligned} a_{n+1}&=\frac{1}{2}\,(a_n+b_n)\\[4pt] b_{n+1}&=\frac{1}{2}\,(a_n-b_n) \end{aligned}
2つの状態と、確率に符号をかけた矢印。表が続くときだけ符号が反転する

手順4:2つ先とつなぐ

隣どうしの式は連立で扱いにくいので、もう1回進めます。an+2a_{n+2} に手順3を2回使うと

an+2=12 (an+1+bn+1)=12⋅12 {(an+bn)+(an−bn)}=12 an \begin{aligned} a_{n+2}&=\frac{1}{2}\,(a_{n+1}+b_{n+1})\\[4pt] &=\frac{1}{2}\cdot\frac{1}{2}\,\bigl\{(a_n+b_n)+(a_n-b_n)\bigr\}\\[4pt] &=\frac{1}{2}\,a_n \end{aligned}

bn+2b_{n+2} も同様に、

bn+2=12⋅12 {(an+bn)−(an−bn)}=12 bn b_{n+2}=\frac{1}{2}\cdot\frac{1}{2}\,\bigl\{(a_n+b_n)-(a_n-b_n)\bigr\}=\frac{1}{2}\,b_n

辺々を足して、qn+2=12 qnq_{n+2}=\dfrac{1}{2}\,q_n が出ます。

手順5:初期値から一般項へ

q1=a1+b1=1q_1=a_1+b_1=1。手順3から a2=12(a1+b1)=12a_2=\dfrac{1}{2}(a_1+b_1)=\dfrac{1}{2}、b2=12(a1−b1)=0b_2=\dfrac{1}{2}(a_1-b_1)=0 なので q2=12q_2=\dfrac{1}{2}。公比 12\dfrac{1}{2} で2つずつ進むので、

q2m−1=12m−1,q2m=12m q_{2m-1}=\frac{1}{2^{m-1}},\qquad q_{2m}=\frac{1}{2^{m}}

どちらも qn=12⌊n/2⌋q_n=\dfrac{1}{2^{\lfloor n/2\rfloor}} とまとめられます(⌊ ⌋\lfloor\ \rfloor は小数点以下の切り捨て)。よって

pn=1−qn2=12−12⌊n/2⌋+1 p_n=\frac{1-q_n}{2}=\frac{1}{2}-\frac{1}{2^{\lfloor n/2\rfloor+1}}

答え:pn=12−12⌊n/2⌋+1p_n=\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{2^{\lfloor n/2\rfloor+1}} (n=2mn=2m と n=2m+1n=2m+1 のとき、ともに 12−12m+1\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{2^{m+1}})。

検算(n=3n=3):8通りのうち Y3Y_3 が奇数になるのは「裏表表」「表表裏」の2通りだけなので p3=28=14p_3=\dfrac{2}{8}=\dfrac{1}{4}。式で n=3n=3 なら ⌊3/2⌋=1\lfloor 3/2\rfloor=1 より 12−14=14\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{4}=\dfrac{1}{4} で一致します。

$p_n$ は2回ごとに同じ値になり、$\dfrac{1}{2}$ に近づく(点は計算値)

グラフでも、p2=p3p_2=p_3、p4=p5p_4=p_5 のように2つずつ同じ値になる階段状です。これが「2つ先とつなぐ」ことが自然だった理由です。

背景にある数学:偶奇は符号の平均で測る

手順3の2本の式は、まとめると行列で書けます。

(an+1bn+1)=12(111−1)(anbn) \begin{pmatrix}a_{n+1}\\ b_{n+1}\end{pmatrix}=\frac{1}{2}\begin{pmatrix}1&1\\ 1&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a_n\\ b_n\end{pmatrix}

この行列を2回かけると 14(2002)=12E\dfrac{1}{4}\begin{pmatrix}2&0\\0&2\end{pmatrix}=\dfrac{1}{2}E(EE は単位行列)になります。2回で「12\dfrac{1}{2} 倍」になるのが、2つ先とつなぐと等比数列になる本当の理由です。大学では推移行列(確率が状態から状態へ移る様子を表す行列)と呼ばれ、漸化式を行列で扱う入り口になります。固有値で数列を解く考え方は、フィボナッチ数列の一般項の記事でも出てきます。

また「偶奇を (−1)Y(-1)^{Y} の平均にかえる」考え方は、さいころの問題でもよく使います。たとえば「さいころを nn 回投げて 11 の目が偶数回出る確率」は、二項定理で (56+16)n\left(\dfrac{5}{6}+\dfrac{1}{6}\right)^n と (56−16)n\left(\dfrac{5}{6}-\dfrac{1}{6}\right)^n を足して2で割ると

12{1+(23)n} \frac{1}{2}\left\{1+\left(\frac{2}{3}\right)^n\right\}

と求まります。符号 (−1)(1の回数)(-1)^{(1\text{の回数})} を平均した結果が (23)n\left(\dfrac{2}{3}\right)^n です。偶数回の確率が 12\dfrac{1}{2} に近づくことも読み取れます。

この問題から学べること

  • 偶奇の確率は「P(偶数)−P(奇数)P(\text{偶数})-P(\text{奇数})」という符号の平均を考えると、余事象 P(偶数)=1−P(奇数)P(\text{偶数})=1-P(\text{奇数}) とつながって一気に解ける
  • 状態(直前の目)を増やして漸化式を立てる。うまくいかないときは、1つ先でなく2つ先とつなぐと簡単になることがある
  • 解いたあとは、小さい nn(n=2,3n=2,3)で全部書き出して確かめる

この記事のまとめ

  • 京大2025年度理系第6問は、硬貨を nn 回投げて表が連続する箇所の数 YnY_n が奇数になる確率 pnp_n を求める問題
  • qn=1−2pnq_n=1-2p_n(偶数と奇数の確率の差)を、直前の目で2つに分けて追うと qn+2=12qnq_{n+2}=\dfrac{1}{2}q_n になる
  • 答えは pn=12−12⌊n/2⌋+1p_n=\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{2^{\lfloor n/2\rfloor+1}}。符号の平均で偶奇を測る方法は、さいころの偶数回の確率にも使える