三角関数の加法定理
sin(α+β)sin(α−β)cos(α+β)cos(α−β)=sinαcosβ+cosαsinβ=sinαcosβ−cosαsinβ=cosαcosβ−sinαsinβ=cosαcosβ+sinαsinβ この記事の要点
- 単位円上の2点の距離を「座標」と「回転」の2通りで計算すると、cos(α−β) の公式が出る
- 残りの3つは、β を −β に、α を 90∘−α に置きかえるだけで導ける
- 2倍角の公式も tan の加法定理も、すべて加法定理から作れる
加法定理は4本もあり、符号の入れかわりで混乱しやすい公式です。けれども、1本だけ証明すれば、残りは置きかえで作れます。この記事では、まず cos(α−β) を単位円で証明し、そこから残りの公式を順に導きます。
加法定理は何を言っているか
sin(α+β) は sinα+sinβ ではありません。たとえば α=β=30∘ とすると
sin(30∘+30∘)=sin60∘=23,sin30∘+sin30∘=1で、値が違います。加法定理は、角の和や差の三角関数を、もとの角の sin と cos で表すための公式です。
加法定理の証明:2点間の距離を2通りに計算する
単位円(原点 O が中心、半径 1 の円)の上に、2点
P(cosα, sinα),Q(cosβ, sinβ)をとります。この2点の距離 PQ を、2つの方法で計算します。
原点のまわりに回転しても、2点間の距離は変わらない方法1:座標のまま計算する
2点間の距離の公式から
PQ2=(cosα−cosβ)2+(sinα−sinβ)2=(cos2α+sin2α)+(cos2β+sin2β)−2(cosαcosβ+sinαsinβ)=2−2(cosαcosβ+sinαsinβ)2行目は展開して並べかえ、3行目は sin2θ+cos2θ=1 を2回使いました。
方法2:回転してから計算する
2点を、原点のまわりに −β だけ回転します。Q は (1, 0) に、P は角 α−β の点 P′(cos(α−β), sin(α−β)) に移ります。回転しても2点間の距離は変わらない
ので
PQ2=P′Q′2={cos(α−β)−1}2+sin2(α−β)=cos2(α−β)+sin2(α−β)−2cos(α−β)+1=2−2cos(α−β)2つの結果を比べる
同じ PQ2 なので、
2−2cos(α−β)=2−2(cosαcosβ+sinαsinβ)両辺から 2 を引いて −2 で割ると、
cos(α−β)=cosαcosβ+sinαsinβが得られます。座標と回転だけを使ったので、α, β がどんな角でも成り立ちます
。
残りの3つの公式を導く
cos(α+β):β を −β に置きかえる
cos(−β)=cosβ、sin(−β)=−sinβ を使います。
cos(α+β)=cos{α−(−β)}=cosαcos(−β)+sinαsin(−β)=cosαcosβ−sinαsinβsin(α+β):sinθ=cos(90∘−θ) を使う
θ=α+β とすると 90∘−θ=(90∘−α)−β なので、cos(α−β) の公式が使えます。
sin(α+β)=cos{(90∘−α)−β}=cos(90∘−α)cosβ+sin(90∘−α)sinβ=sinαcosβ+cosαsinβ3行目では cos(90∘−α)=sinα、sin(90∘−α)=cosα を使いました。
sin(α−β):もう一度 β を −β に置きかえる
sin(α−β)=sinαcos(−β)+cosαsin(−β)=sinαcosβ−cosαsinβこれで4本がそろいました。
加法定理から広がる公式
tan の加法定理:tan(α+β)=cos(α+β)sin(α+β) の分母・分子を cosαcosβ で割ると、
tan(α+β)=1−tanαtanβtanα+tanβ(cosα、cosβ、cos(α+β) が 0 でないとき)。tan の加法定理は、tan1°は有理数か(京大2006年)の入試問題でも主役になります。
2倍角の公式:β=α とおくと
sin2αcos2α=2sinαcosα=cos2α−sin2α=2cos2α−1=1−2sin2α例題
sin75∘ と cos75∘ の値を求めよ。
75∘=45∘+30∘ と分けて、加法定理を使います。
sin75∘=sin45∘cos30∘+cos45∘sin30∘=22⋅23+22⋅21=46+2cos75∘=cos45∘cos30∘−sin45∘sin30∘=22⋅23−22⋅21=46−2検算として sin275∘+cos275∘ を計算すると、16(8+212)+(8−212)=1 となり、正しいことが確かめられます。
注意
cos の加法定理は、符号が角の符号と逆になります(cos(α+β) は「−」、cos(α−β) は「+」)。迷ったら cos(α−β) に β=α を代入し、cos2α+sin2α=cos0=1 となるかで確かめましょう。
この記事のまとめ
- 単位円上の2点の距離を、座標と回転の2通りで計算すると cos(α−β) の公式が出る。
- β→−β、sinθ=cos(90∘−θ) の置きかえで、残りの3本が導ける。
- tan の加法定理と2倍角の公式は、加法定理から作れる。