ヘロンの公式の証明:余弦定理と因数分解で3辺から面積を導く

数学1A図形と計量(三角比)公式の成立 更新
目次

ヘロンの公式

三角形の3辺の長さを a, b, ca,\ b,\ c、s=a+b+c2s=\dfrac{a+b+c}{2} とすると、面積 SS は

S=s(s−a)(s−b)(s−c) S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}

この記事の要点

  • 面積の公式 S=12absin⁡CS=\dfrac{1}{2}ab\sin C の sin⁡C\sin C を、余弦定理で求めた cos⁡C\cos C から作る
  • S2S^2 を計算すると、2乗の差の因数分解が2回でき、4つの1次式の積になる
  • 3辺が分かれば角を求めずに面積が出るので、内接円・外接円の半径の計算にも使える

ヘロンの公式は、3辺の長さだけで三角形の面積が求まる便利な公式です。この記事では、数学Iで学ぶ面積の公式と余弦定理から、因数分解を使って証明します。

ヘロンの公式は何を言っているか

ふつう三角形の面積は「底辺×高さ÷2」や 12absin⁡C\dfrac{1}{2}ab\sin C で求めます。どちらも高さや角の大きさが必要です。

ヘロンの公式は、角や高さを求めなくても、3辺の長さだけで面積が決まる ことを表しています。ss は周の長さの半分です。

ヘロンの公式の証明

1. 面積を sin⁡C\sin C で表す

次の図で、A から辺 BC に下ろした垂線の長さは bsin⁡Cb\sin C なので

S=12absin⁡C S=\frac{1}{2}ab\sin C
A から BC への垂線の長さは b sin C

2. 両辺を2乗して cos⁡C\cos C を入れる

sin⁡2C=1−cos⁡2C\sin^2 C=1-\cos^2 C を使うために、両辺を2乗します。

S2=14a2b2sin⁡2C=14a2b2(1−cos⁡2C) \begin{aligned} S^2&=\frac{1}{4}a^2b^2\sin^2 C\\[4pt] &=\frac{1}{4}a^2b^2(1-\cos^2 C) \end{aligned}

余弦定理より cos⁡C=a2+b2−c22ab\cos C=\dfrac{a^2+b^2-c^2}{2ab} です。これを代入して、分母を 1616 にそろえます。

S2=14a2b2−14a2b2⋅(a2+b2−c2)24a2b2=(2ab)2−(a2+b2−c2)216 \begin{aligned} S^2&=\frac{1}{4}a^2b^2-\frac{1}{4}a^2b^2\cdot\frac{(a^2+b^2-c^2)^2}{4a^2b^2}\\[4pt] &=\frac{(2ab)^2-(a^2+b^2-c^2)^2}{16} \end{aligned}

3. 2乗の差を因数分解する(1回目)

分子は X2−Y2=(X+Y)(X−Y)X^2-Y^2=(X+Y)(X-Y) の形です。

16S2=(2ab+a2+b2−c2)(2ab−a2−b2+c2)={(a+b)2−c2}{c2−(a−b)2} \begin{aligned} 16S^2&=(2ab+a^2+b^2-c^2)(2ab-a^2-b^2+c^2)\\[4pt] &=\{(a+b)^2-c^2\}\{c^2-(a-b)^2\} \end{aligned}

2行目は、a2+2ab+b2=(a+b)2a^2+2ab+b^2=(a+b)^2、a2−2ab+b2=(a−b)2a^2-2ab+b^2=(a-b)^2 を使いました。

4. 2乗の差を因数分解する(2回目)

どちらの { }\{\ \} も、また2乗の差です。

16S2=(a+b+c)(a+b−c)(c+a−b)(c−a+b) 16S^2=(a+b+c)(a+b-c)(c+a-b)(c-a+b)

5. ss で書きかえる

a+b+c=2sa+b+c=2s なので、a+b−c=2s−2c=2(s−c)a+b-c=2s-2c=2(s-c) です。同じように c+a−b=2(s−b)c+a-b=2(s-b)、c−a+b=2(s−a)c-a+b=2(s-a) となります。

16S2=2s⋅2(s−c)⋅2(s−b)⋅2(s−a)S2=s(s−a)(s−b)(s−c) \begin{aligned} 16S^2&=2s\cdot 2(s-c)\cdot 2(s-b)\cdot 2(s-a)\\[4pt] S^2&=s(s-a)(s-b)(s-c) \end{aligned}

S>0S>0 なので、S=s(s−a)(s−b)(s−c)S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} が得られます 。

使い方の例題

例題

3辺の長さが 5, 6, 75,\ 6,\ 7 の三角形の面積を求めよ。

s=5+6+72=9s=\dfrac{5+6+7}{2}=9 です。

S=9⋅(9−5)⋅(9−6)⋅(9−7)=9⋅4⋅3⋅2=216=66 \begin{aligned} S&=\sqrt{9\cdot(9-5)\cdot(9-6)\cdot(9-7)}\\[4pt] &=\sqrt{9\cdot 4\cdot 3\cdot 2}=\sqrt{216}=6\sqrt{6} \end{aligned}

検算:長さ 77 の辺に向かい合う角を θ\theta とすると、余弦定理より cos⁡θ=52+62−722⋅5⋅6=15\cos\theta=\dfrac{5^2+6^2-7^2}{2\cdot 5\cdot 6}=\dfrac{1}{5}、sin⁡θ=265\sin\theta=\dfrac{2\sqrt{6}}{5}。12⋅5⋅6⋅265=66\dfrac{1}{2}\cdot 5\cdot 6\cdot\dfrac{2\sqrt{6}}{5}=6\sqrt{6} で一致します。

ヘロンの公式の発展的な使い方

面積が分かると、内接円の半径 rr と外接円の半径 RR も求められます。次の2つの式と組み合わせます。

  • S=rsS=rs(内心と3つの頂点を結んでできる3つの三角形の面積の和)
  • S=abc4RS=\dfrac{abc}{4R}(S=12absin⁡CS=\dfrac{1}{2}ab\sin C に、正弦定理の sin⁡C=c2R\sin C=\dfrac{c}{2R} を入れたもの)

発展例題

3辺の長さが 4, 5, 64,\ 5,\ 6 の三角形について、次の値を求めよ。

(1) 内接円の半径 rr

(2) 外接円の半径 RR

1. ヘロンの公式で面積を求める

s=4+5+62=152s=\dfrac{4+5+6}{2}=\dfrac{15}{2} です。

S=152⋅72⋅52⋅32=15754=1574 \begin{aligned} S&=\sqrt{\frac{15}{2}\cdot\frac{7}{2}\cdot\frac{5}{2}\cdot\frac{3}{2}}\\[4pt] &=\frac{\sqrt{1575}}{4}=\frac{15\sqrt{7}}{4} \end{aligned}

(1575=225×71575=225\times 7 なので 1575=157\sqrt{1575}=15\sqrt{7})

2. 内接円の半径

S=rsS=rs より

r=Ss=1574⋅215=72 r=\frac{S}{s}=\frac{15\sqrt{7}}{4}\cdot\frac{2}{15}=\frac{\sqrt{7}}{2}

3. 外接円の半径

S=abc4RS=\dfrac{abc}{4R} より

R=abc4S=4⋅5⋅6157=87=877 R=\frac{abc}{4S}=\frac{4\cdot 5\cdot 6}{15\sqrt{7}}=\frac{8}{\sqrt{7}}=\frac{8\sqrt{7}}{7}
3辺 4, 5, 6 の三角形の内接円(半径 r)と外接円(半径 R)

この問題では、ヘロンの公式で面積を先に求め、S=rsS=rs と S=abc4RS=\dfrac{abc}{4R} を使って半径を逆算しました 。

検算(別の方法):長さ 66 の辺に向かい合う角を AA とすると、余弦定理より cos⁡A=52+42−622⋅5⋅4=18\cos A=\dfrac{5^2+4^2-6^2}{2\cdot 5\cdot 4}=\dfrac{1}{8}、sin⁡A=378\sin A=\dfrac{3\sqrt{7}}{8}。正弦定理で 2R=6sin⁡A=1672R=\dfrac{6}{\sin A}=\dfrac{16}{\sqrt{7}} となり、R=877R=\dfrac{8\sqrt{7}}{7} と一致します。

注意

ss は周の長さそのものではなく、その半分です。s=a+b+cs=a+b+c としてしまう間違いが多いので注意しましょう。また、3辺の長さが三角形を作れない組(1, 2, 41,\ 2,\ 4 など)では、根号の中が負になります。

この記事のまとめ

  • S=12absin⁡CS=\dfrac{1}{2}ab\sin C と余弦定理から 16S2=(2ab)2−(a2+b2−c2)216S^2=(2ab)^2-(a^2+b^2-c^2)^2 を作る。
  • 2乗の差の因数分解を2回使い、s=a+b+c2s=\dfrac{a+b+c}{2} で書きかえると S=s(s−a)(s−b)(s−c)S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}。
  • S=rsS=rs、S=abc4RS=\dfrac{abc}{4R} と組み合わせると、内接円・外接円の半径が求まる。