フィボナッチ数列の一般項から線形代数の固有値へ

目次

高校の問題

a1=1, a2=1, an+2=an+1+ana_1=1,\ a_2=1,\ a_{n+2}=a_{n+1}+a_n で定められる数列 {an}\{a_n\} の一般項を求めよ。

この記事の要点

  • 高校では、特性方程式 x2=x+1x^2=x+1 の2つの解 α, β\alpha,\ \beta を使って一般項 an=αn−βn5a_n=\dfrac{\alpha^n-\beta^n}{\sqrt{5}} を求める
  • 同じ漸化式を行列で書くと、特性方程式は行列の固有値を求める方程式とまったく同じになる
  • 固有値の考え方を使うと、α\alpha が「隣どうしの比の行き先」になる理由も見えてくる

この数列は、1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, ⋯1,\ 1,\ 2,\ 3,\ 5,\ 8,\ 13,\ \cdots と、前の2つを足して次を作るフィボナッチ数列です。数学Bの3項間漸化式の代表的な問題ですが、その解き方の中には、大学で学ぶ線形代数の考え方が隠れています。

まずは高校の方法で解く

漸化式 an+2=an+1+ana_{n+2}=a_{n+1}+a_n の an+2, an+1, ana_{n+2},\ a_{n+1},\ a_n を x2, x, 1x^2,\ x,\ 1 に置きかえた方程式

x2=x+1すなわちx2−x−1=0 x^2=x+1\quad\text{すなわち}\quad x^2-x-1=0

を特性方程式といいます。解は

α=1+52,β=1−52 \alpha=\frac{1+\sqrt{5}}{2},\qquad \beta=\frac{1-\sqrt{5}}{2}

で、解と係数の関係から α+β=1, αβ=−1\alpha+\beta=1,\ \alpha\beta=-1 です。

1. 等比数列の形を2つ作る

α+β=1, αβ=−1\alpha+\beta=1,\ \alpha\beta=-1 を使うと、漸化式は

an+2−αan+1=β (an+1−αan) a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta\,(a_{n+1}-\alpha a_n)

と書きかえられます(右辺を展開すると βan+1−αβan=βan+1+an\beta a_{n+1}-\alpha\beta a_n=\beta a_{n+1}+a_n、左辺に移すと an+2=(α+β)an+1+ana_{n+2}=(\alpha+\beta)a_{n+1}+a_n で、もとの漸化式になります)。数列 {an+1−αan}\{a_{n+1}-\alpha a_n\} は公比 β\beta の等比数列で、初項は a2−αa1=1−α=βa_2-\alpha a_1=1-\alpha=\beta なので

an+1−αan=β⋅βn−1=βn a_{n+1}-\alpha a_n=\beta\cdot\beta^{n-1}=\beta^n

α\alpha と β\beta を入れかえた同じ計算で

an+1−βan=αn a_{n+1}-\beta a_n=\alpha^n

2. 2式を引いて an+1a_{n+1} を消す

(α−β) an=αn−βn (\alpha-\beta)\,a_n=\alpha^n-\beta^n

α−β=5\alpha-\beta=\sqrt{5} なので

an=15{(1+52)n−(1−52)n} a_n=\frac{1}{\sqrt{5}}\left\{\left(\frac{1+\sqrt{5}}{2}\right)^n-\left(\frac{1-\sqrt{5}}{2}\right)^n\right\}

すべての項が整数なのに、一般項には 5\sqrt{5} が入っています。たとえば n=3n=3 を代入すると、5\sqrt{5} が打ち消し合って a3=2a_3=2 になります。

漸化式を行列で書く

ここからが大学数学へのつながりです。隣り合う2項を縦に並べたベクトル v⃗n=(an+1an)\vec{v}_n=\begin{pmatrix}a_{n+1}\\ a_n\end{pmatrix} を考えると、漸化式は

(an+2an+1)=(1110)(an+1an) \begin{pmatrix}a_{n+2}\\ a_{n+1}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&1\\ 1&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a_{n+1}\\ a_n\end{pmatrix}

と、1つの行列 M=(1110)M=\begin{pmatrix}1&1\\ 1&0\end{pmatrix} を掛ける形で書けます(上の行が an+2=an+1+ana_{n+2}=a_{n+1}+a_n、下の行が an+1=an+1a_{n+1}=a_{n+1})。したがって

v⃗n=Mn−1 v⃗1 \vec{v}_n=M^{n-1}\,\vec{v}_1

で、一般項を求めることは「MM を何回も掛けた結果を求めること」になります。

特性方程式は「固有値」の方程式

行列 MM を掛けても向きが変わらず、長さだけが λ\lambda 倍になるベクトル p⃗ (≠0⃗)\vec{p}\ (\neq\vec{0}) を、MM の固有ベクトル、その倍率 λ\lambda を固有値といいます。

Mp⃗=λp⃗ M\vec{p}=\lambda\vec{p}

p⃗=(xy)\vec{p}=\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix} として成分で書くと、x+y=λx, x=λyx+y=\lambda x,\ x=\lambda y です。2つ目を1つ目に代入すると λy+y=λ2y\lambda y+y=\lambda^2y です。y=0y=0 だと x=λy=0x=\lambda y=0 となって p⃗=0⃗\vec{p}=\vec{0} になってしまうので y≠0y\neq 0 で、両辺を yy で割ると

λ2−λ−1=0 \lambda^2-\lambda-1=0

となり、固有値の方程式は、高校の特性方程式 x2−x−1=0x^2-x-1=0 とまったく同じ です。固有値は α, β\alpha,\ \beta、固有ベクトルはそれぞれ (α1), (β1)\begin{pmatrix}\alpha\\ 1\end{pmatrix},\ \begin{pmatrix}\beta\\ 1\end{pmatrix} です。

固有ベクトルの方向では、MM を nn 回掛けても αn\alpha^n 倍・βn\beta^n 倍になるだけです。初めのベクトル v⃗1=(11)\vec{v}_1=\begin{pmatrix}1\\ 1\end{pmatrix} を2つの固有ベクトルの和に分けておけば、Mn−1M^{n-1} を掛けた結果は α\alpha の累乗と β\beta の累乗の組み合わせになります。高校の一般項に αn\alpha^n と βn\beta^n が出てくるのは、このためです。

隣どうしの比は α に近づく

∣β∣=0.618⋯<1|\beta|=0.618\cdots<1 なので、nn が大きくなると βn\beta^n は 00 に近づきます。したがって ana_n はほぼ αn5\dfrac{\alpha^n}{\sqrt{5}} となり、隣どうしの比は

an+1an ⟶ α=1+52=1.618⋯ \frac{a_{n+1}}{a_n}\ \longrightarrow\ \alpha=\frac{1+\sqrt{5}}{2}=1.618\cdots

に近づきます。この値は黄金比と呼ばれる数です。

隣どうしの比は、上下しながら α ≒ 1.618 に近づく

線形代数では、何回も掛けたときにいちばん効いてくるのは、絶対値が最大の固有値 だと考えます。フィボナッチ数列では、それが α\alpha です。

この記事のまとめ

  • フィボナッチ数列の一般項は、特性方程式 x2=x+1x^2=x+1 の解 α, β\alpha,\ \beta で an=αn−βn5a_n=\dfrac{\alpha^n-\beta^n}{\sqrt{5}} と表せる。
  • 漸化式を行列 MM で書くと、特性方程式は MM の固有値の方程式と一致する。
  • 絶対値が最大の固有値 α\alpha(黄金比)が、隣どうしの比の行き先になる。