オイラーの公式 e^{iθ}=cosθ+i sinθ:複素数平面の回転から指数関数へ

目次

オイラーの公式

実数 θ\theta について

eiθ=cos⁡θ+isin⁡θ e^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta

とくに θ=π\theta=\pi とすると eiπ+1=0e^{i\pi}+1=0。

この記事の要点

  • cos⁡θ+isin⁡θ\cos\theta+i\sin\theta どうしのかけ算は、角の足し算になる。これは指数法則 aαaβ=aα+βa^\alpha a^\beta=a^{\alpha+\beta} と同じ形
  • 微分すると ii 倍になり、ekxe^{kx} を微分すると kk 倍になることと同じ形
  • (1+iθn)n\left(1+\dfrac{i\theta}{n}\right)^n の極限を計算すると、本当に cos⁡θ+isin⁡θ\cos\theta+i\sin\theta に近づく

数学IIIの複素数平面では、「複素数のかけ算は回転」と学びます。このコラムでは、そこから出発して、指数関数 exe^x と三角関数が1つの式で結ばれるオイラーの公式を紹介します。

高校数学の問題:かけ算で角が足される

問題

(cos⁡α+isin⁡α)(cos⁡β+isin⁡β)(\cos\alpha+i\sin\alpha)(\cos\beta+i\sin\beta) を計算せよ。

展開して i2=−1i^2=-1 を使い、加法定理でまとめます。

(cos⁡αcos⁡β−sin⁡αsin⁡β)+i(sin⁡αcos⁡β+cos⁡αsin⁡β)=cos⁡(α+β)+isin⁡(α+β) \begin{aligned} &(\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta)+i(\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta)\\[4pt] &=\cos(\alpha+\beta)+i\sin(\alpha+\beta) \end{aligned}

E(θ)=cos⁡θ+isin⁡θE(\theta)=\cos\theta+i\sin\theta と書くと、この結果は

E(α) E(β)=E(α+β) E(\alpha)\,E(\beta)=E(\alpha+\beta)

です。指数関数の指数法則 aαaβ=aα+βa^\alpha a^\beta=a^{\alpha+\beta} と同じ形 になっています。ここから、「E(θ)E(\theta) は何かの指数関数ではないか」と考えるのが、オイラーの公式への入り口です。

微分で見る:微分すると i 倍になる

E(θ)E(\theta) を θ\theta で微分してみます(ii は定数として扱います)。

E′(θ)=−sin⁡θ+icos⁡θ=i(cos⁡θ+isin⁡θ)=i E(θ) \begin{aligned} E'(\theta)&=-\sin\theta+i\cos\theta\\[4pt] &=i(\cos\theta+i\sin\theta)=i\,E(\theta) \end{aligned}

2行目は、i⋅isin⁡θ=−sin⁡θi\cdot i\sin\theta=-\sin\theta を使いました。一方、指数関数は (ekθ)′=k ekθ(e^{k\theta})'=k\,e^{k\theta} で、微分すると kk 倍になります(ee の定義と微分は(e^x)’=e^x になる理由で紹介しました)。E(θ)E(\theta) は「微分すると ii 倍」なので、k=ik=i の指数関数、つまり eiθe^{i\theta} と考えられます。θ=0\theta=0 では E(0)=1=e0E(0)=1=e^0 で、出発点も一致します。

極限で見る:小さな回転を n 回くり返す

ee には ex=lim⁡n→∞(1+xn)ne^x=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{x}{n}\right)^n という表し方があります。ここに x=iπx=i\pi を入れたらどうなるか、実際に計算してみます。

1+iπn1+\dfrac{i\pi}{n} は、複素数平面で偏角がおよそ πn\dfrac{\pi}{n}、絶対値が 1+π2n2\sqrt{1+\dfrac{\pi^2}{n^2}} の数です。これを nn 回かけると、小さな回転を nn 回くり返すことになります。

(1 + iπ/n)ⁿ は、n を大きくすると −1 に近づく

計算すると、n=4n=4 では −2.32+1.20i-2.32+1.20i、n=32n=32 では −1.17+0.01i-1.17+0.01i、n=1000n=1000 では −1.005+0.00001i-1.005+0.00001i となり、−1-1 に近づきます。つまり

eiπ=cos⁡π+isin⁡π=−1 e^{i\pi}=\cos\pi+i\sin\pi=-1

です。オイラー自身も、1748年の著書『無限解析入門』で、ド・モアブルの定理と exe^x のこの極限を使ってこの公式を示しています。

その先:大学数学と物理へ

オイラーの公式を使うと、三角関数の計算が指数関数の計算に変わります。たとえば加法定理は、ei(α+β)=eiαeiβe^{i(\alpha+\beta)}=e^{i\alpha}e^{i\beta} の両辺の実部と虚部を比べるだけで出てきます。

  • 複素関数論(大学数学):eze^z や sin⁡z\sin z を、複素数 zz を入れられる関数として考える分野。eiθ=cos⁡θ+isin⁡θe^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta は、exe^x・sin⁡x\sin x・cos⁡x\cos x を無限に続く多項式(べき級数)で表すと、項を並べかえるだけで確かめられます。
  • フーリエ解析:音や電気信号のような波を、たくさんの eiωte^{i\omega t}(振動数 ω\omega の回転)の和に分けて調べる方法。
  • 物理・電気回路:交流の電圧や、ばねの振動(三角関数と単振動)を eiωte^{i\omega t} で表すと、微分が「iωi\omega を掛ける」だけになり、計算が簡単になります。

eiπ+1=0e^{i\pi}+1=0 は、ee・ii・π\pi・11・00 という数学の大切な5つの数が1つの式に入っていることでも知られています。

注意

高校数学では、eiθe^{i\theta} の定義(虚数乗の意味)は扱いません。このコラムの「微分で見る」「極限で見る」は、オイラーの公式が自然であることを確かめる見方で、厳密な証明には大学で学ぶべき級数や複素関数の考え方が必要です。

この記事のまとめ

  • cos⁡θ+isin⁡θ\cos\theta+i\sin\theta のかけ算は角の足し算になり、指数法則と同じ形をしている。
  • 微分すると ii 倍、(1+iπn)n→−1\left(1+\dfrac{i\pi}{n}\right)^n\to -1 という見方からも、eiθ=cos⁡θ+isin⁡θe^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta が自然に出てくる。
  • オイラーの公式は、複素関数論・フーリエ解析・交流回路など、大学数学と物理で広く使われる。