(e^x)'=e^x になる理由:ネイピア数 e の定義から導く

数学3C微分法とその応用公式の成立 更新
目次

指数関数の導関数

ネイピア数 e=lim⁡h→0(1+h)1h=2.71828⋯e=\displaystyle\lim_{h\to 0}(1+h)^{\frac{1}{h}}=2.71828\cdots について

(ex)′=ex (e^x)'=e^x

また、a>0, a≠1a>0,\ a\neq 1 のとき (ax)′=axlog⁡a(a^x)'=a^x\log a(log⁡\log は ee を底とする自然対数)。

この記事の要点

  • axa^x の導関数は「x=0x=0 での傾き」×axa^x の形になる
  • ee は、x=0x=0 での傾きがちょうど 11 になる底。だから exe^x は微分しても変わらない
  • 定義 e=lim⁡(1+h)1he=\lim(1+h)^{\frac{1}{h}} から、lim⁡h→0eh−1h=1\displaystyle\lim_{h\to 0}\frac{e^h-1}{h}=1 が導ける

「exe^x は微分しても exe^x」は数学IIIでよく使う公式ですが、なぜ 2.718⋯2.718\cdots という中途半端な数を底にすると、こんなにきれいな形になるのでしょうか。この記事では、ee の定義から順にたどって、その理由を確かめます。

指数関数の微分は「0での傾き」で決まる

f(x)=axf(x)=a^x を、導関数の定義にしたがって微分します。

f′(x)=lim⁡h→0ax+h−axh=lim⁡h→0ax(ah−1)h=axlim⁡h→0ah−1h \begin{aligned} f'(x)&=\lim_{h\to 0}\frac{a^{x+h}-a^x}{h}\\[4pt] &=\lim_{h\to 0}\frac{a^x(a^h-1)}{h}\\[4pt] &=a^x\lim_{h\to 0}\frac{a^h-1}{h} \end{aligned}

2行目は指数法則 ax+h=ax⋅aha^{x+h}=a^x\cdot a^h で axa^x をくくり出し、3行目は hh を含まない axa^x を極限の外に出しました。

最後の極限 lim⁡h→0ah−1h\displaystyle\lim_{h\to 0}\frac{a^h-1}{h} は、f′(0)f'(0)、つまりグラフの x=0x=0 での接線の傾きです。したがって

(ax)′=f′(0)⋅ax (a^x)'=f'(0)\cdot a^x

となり、指数関数の導関数は、もとの関数の「定数倍」になる ことが分かります。

点 (0, 1) での接線の傾きは、底によって変わる。e はそれがちょうど 1 になる底

h=0.0001h=0.0001 として傾きを計算すると、a=2a=2 では約 0.6930.693、a=3a=3 では約 1.0991.099 です。底を 22 から 33 へ大きくしていくと、傾きは 11 より小さい値から大きい値へ変わります。そこで、傾きがちょうど 11 になる底を使えば、f′(0)=1f'(0)=1 となって、導関数がもとの関数そのものになるはずです。その底が ee です。

e の定義から lim (e^h−1)/h=1 を導く

数学IIIでは、ネイピア数 ee を次の極限で定義します。

e=lim⁡h→0(1+h)1h e=\lim_{h\to 0}(1+h)^{\frac{1}{h}}
hh0.10.10.010.010.0010.001
(1+h)1h(1+h)^{\frac{1}{h}}2.5937⋯2.5937\cdots2.7048⋯2.7048\cdots2.7169⋯2.7169\cdots

この ee について、x=0x=0 での傾きが 11 であること、つまり lim⁡h→0eh−1h=1\displaystyle\lim_{h\to 0}\frac{e^h-1}{h}=1 を示します。

1. t=eh−1t=e^h-1 とおく

eh=1+te^h=1+t なので、両辺の自然対数をとって h=log⁡(1+t)h=\log(1+t)。また、h→0h\to 0 のとき t→0t\to 0 です。

2. tt だけの式に書きかえる

eh−1h=tlog⁡(1+t)=11tlog⁡(1+t)=1log⁡(1+t)1t \begin{aligned} \frac{e^h-1}{h}&=\frac{t}{\log(1+t)}\\[4pt] &=\frac{1}{\dfrac{1}{t}\log(1+t)}\\[4pt] &=\frac{1}{\log(1+t)^{\frac{1}{t}}} \end{aligned}

2行目は分母と分子を tt で割り、3行目は対数の性質 klog⁡M=log⁡Mkk\log M=\log M^k を使いました。

3. 極限をとる

t→0t\to 0 のとき (1+t)1t→e(1+t)^{\frac{1}{t}}\to e なので、分母は log⁡e=1\log e=1 に近づきます。したがって

lim⁡h→0eh−1h=1log⁡e=1 \lim_{h\to 0}\frac{e^h-1}{h}=\frac{1}{\log e}=1

これで ee を底とする指数関数の f′(0)f'(0) が 11 だと分かりました。最初の式 (ax)′=f′(0)⋅ax(a^x)'=f'(0)\cdot a^x に a=ea=e をあてはめると、(ex)′=1⋅ex=ex(e^x)'=1\cdot e^x=e^x が導けます。

a^x の微分も e から求まる

一般の底 aa は、a=elog⁡aa=e^{\log a} と書けるので、ax=exlog⁡aa^x=e^{x\log a} です。合成関数の微分を使うと

(ax)′=(exlog⁡a)′=exlog⁡a⋅log⁡a=axlog⁡a \begin{aligned} (a^x)'&=\left(e^{x\log a}\right)'\\[4pt] &=e^{x\log a}\cdot\log a\\[4pt] &=a^x\log a \end{aligned}

となります。a=2a=2 のとき log⁡2=0.6931⋯\log 2=0.6931\cdots で、さきほど計算した x=0x=0 での傾き(約 0.6930.693)と一致します。

例題

曲線 y=exy=e^x 上の点 (1, e)(1,\ e) における接線の方程式を求めよ。

y′=exy'=e^x なので、x=1x=1 での接線の傾きは e1=ee^1=e です。点 (1, e)(1,\ e) を通り傾き ee の直線は

y−e=e(x−1)y=ex \begin{aligned} y-e&=e(x-1)\\[4pt] y&=ex \end{aligned}

答えは y=exy=ex です。この接線は原点を通ります。検算として、x=1x=1 を代入すると y=ey=e となり、接点を通っていることが確かめられます。

注意

(ex)′(e^x)' を、(xn)′=nxn−1(x^n)'=nx^{n-1} と混同して xex−1xe^{x-1} としてしまうのはよくある間違いです。xnx^n は「底が変数」、exe^x は「指数が変数」で、まったく別の関数です。

この記事のまとめ

  • (ax)′=f′(0)⋅ax(a^x)'=f'(0)\cdot a^x。指数関数の微分は「x=0x=0 での傾き」で決まる。
  • e=lim⁡(1+h)1he=\lim(1+h)^{\frac{1}{h}} から lim⁡eh−1h=1\lim\dfrac{e^h-1}{h}=1 が導け、(ex)′=ex(e^x)'=e^x となる。
  • 一般の底では (ax)′=axlog⁡a(a^x)'=a^x\log a。