ド・モアブルの定理
n が整数のとき
(cosθ+isinθ)n=cosnθ+isinnθこの記事の要点
- 極形式どうしのかけ算は、加法定理によって「絶対値はかけ算、偏角は足し算」になる
- 同じ数を n 回かけると偏角が n 倍になる。これを数学的帰納法で示す
- 逆向きに使うと、z3=8i のような方程式の解が、円周上に等間隔に並ぶ点として求まる
ド・モアブルの定理は、複素数の n 乗を一気に計算できる定理です。この記事では、極形式のかけ算が回転になることを加法定理で確かめ、そこから数学的帰納法で証明します。
ド・モアブルの定理は何を言っているか
z=cosθ+isinθ は、複素数平面で原点からの距離が 1、偏角が θ の点です。定理は、z を n 回かけると、偏角が nθ の点になる
ことを言っています。
z をかけるたびに、偏角が θ ずつ増える(θ = 40° の例)ド・モアブルの定理の証明
1. 極形式のかけ算を計算する
2つの複素数 cosα+isinα と cosβ+isinβ をかけます。i2=−1 に注意して展開します。
(cosα+isinα)(cosβ+isinβ)=cosαcosβ+icosαsinβ+isinαcosβ+i2sinαsinβ=(cosαcosβ−sinαsinβ)+i(sinαcosβ+cosαsinβ)=cos(α+β)+isin(α+β)最後の行は加法定理です。かけ算をすると偏角が足し算になる
ことが分かりました。
2. n が正の整数のとき(数学的帰納法)
n=1 のときは、両辺とも cosθ+isinθ で成り立ちます。
n=k のとき成り立つと仮定します。n=k+1 のとき、手順1の式で α=kθ、β=θ とすると
(cosθ+isinθ)k+1=(coskθ+isinkθ)(cosθ+isinθ)=cos(k+1)θ+isin(k+1)θよって n=k+1 のときも成り立ち、すべての正の整数 n で成り立ちます。
3. n=0 と負の整数のとき
n=0 のときは、両辺とも 1 です。
手順1で α=θ、β=−θ とすると、積は cos0+isin0=1 です。したがって
(cosθ+isinθ)−1=cos(−θ)+isin(−θ)n=−m(m は正の整数)のときは、この式と手順2を組み合わせて
(cosθ+isinθ)−m={cos(−θ)+isin(−θ)}m=cos(−mθ)+isin(−mθ)となり、n が負の整数でも成り立ちます。
使い方の例題
例題
(1+3i)6 を計算せよ。
まず極形式にします。絶対値は 12+(3)2=2 なので
1+3i=2(21+23i)=2(cos60∘+isin60∘)ド・モアブルの定理より
(1+3i)6=26(cos360∘+isin360∘)=64(1+0⋅i)=64検算:(1+3i)2=1+23i−3=−2+23i、(1+3i)3=(−2+23i)(1+3i)=−2−23i+23i−6=−8。よって6乗は (−8)2=64 で一致します。
ド・モアブルの定理の発展的な使い方
定理を逆向きに使うと、zn=(複素数)の形の方程式が解けます。
発展例題
方程式 z3=8i を解け。
1. 両辺を極形式にする
z=r(cosθ+isinθ)(r>0、0∘≦θ<360∘)とおきます。8i=8(cos90∘+isin90∘) です。
2. ド・モアブルの定理で左辺を計算する
r3(cos3θ+isin3θ)=8(cos90∘+isin90∘)3. 絶対値と偏角を比べる
絶対値から r3=8 で、r>0 より r=2。偏角は 360∘ の整数倍のずれを許して
3θ=90∘+360∘×k(k は整数)0∘≦θ<360∘ なので、k=0, 1, 2 より θ=30∘, 150∘, 270∘ です。
4. 解を書く
z=3+i,−3+i,−2i3つの解は、半径 2 の円周上に 120° ずつ並ぶこの問題では、ド・モアブルの定理を逆向きに使い、n 乗の方程式を「絶対値」と「偏角」の2つの式に分けて解きました
。偏角を 360∘ ずらしたものも同じ点なので、k を変えると解が3つ出てきます。
検算(別の方法):(−2i)3=−8i3=−8⋅(−i)=8i です。(3+i)2=2+23i、(3+i)3=(2+23i)(3+i)=23+2i+6i−23=8i で、どちらも一致します。また3つの解の和は 0 で、z3−8i=0 の z2 の係数が 0 であることとも合っています。
注意
偏角を比べるとき、3θ=90∘ だけにすると解が1つしか出ません。偏角には 360∘ の整数倍のずれがあることを忘れないようにしましょう。
この記事のまとめ
- 極形式のかけ算は、加法定理により偏角の足し算になる。
- これを n 回くり返すと (cosθ+isinθ)n=cosnθ+isinnθ。n が負の整数でも成り立つ。
- 逆向きに使うと、z3=8i の解が円周上に等間隔に並ぶ点として求まる。